4月に全国各地で行われた統一地方選挙では、世の中の変化を実感する出来事が続いた。
岩手県議選では、東北を中心に活動している「みちのくプロレス」の社長兼レスラー、ザ・グレート・サスケさん(本名・村川政徳)がトップで当選、続く東京都世田谷区議選では「差別のない社会を作りたい」と出馬した性同一性障害がある上川あやさんが52議席中6番目で当選した。
サスケさんの当選以降、ちまたの注目はその覆面に集中。「みちのくプロレス」の公式サイトは大にぎわいだった(Link)。外すべき、その必要はないという両論があるものの、おしなべて肯定派が多い。「そもそもあれが素顔だ」「覆面がダメなら、他の議員はカツラを外せ!」といった斬新な意見もあったが、覆面姿の選挙ポスターが受け付けられ「ザ・グレート・サスケ」という名前での立候補が認められたわけだから「何を今さら…」といった思いが共通しているようだった。
戸籍上は男性だが、「女性」としての立候補を公言していた上川さんは、投票前から話題を集めた。そもそも立候補自体が認められるのかが注目されたが、公職選挙法には「性別」の記載について規定がなく、女性として当選した。
公職選挙法は、重度の障害者でも代筆や郵便投票が認められないなど、投票する側にとってはバリアがあることが指摘されているけれど、芸能人が芸名で立候補したりできるように、立候補する側にとっては、覆面も性別も問わない、意外にも大らかな側面があった。
以前なら奇異に受け取られていたものが「オリジナリティ」として受け入れられるようになってきた。
「世の中が少しずつ動いていると感じた」
そう言って、画面の向こうでうれしそうにしている川上さんの映像を見ながら、何人かのタレントの顔が浮かんできた。カルーセル麻紀さん(平原徹男、60歳)、おすぎさん(杉浦孝昭、58歳)、ピーコさん(杉浦克昭、58歳)、三輪明宏さん(67歳)、ピーターさん(池畑慎之介、50歳)……。性転換、おかま、女装などの個性で知られる面々だ。
1979年から82年にかけてNHKで放送された「テレビファソラシド」という番組は、永六輔さんとタモリさんの軽妙な司会ぶりが可笑しかった。だが、当時の母は、サングラスをかけたままのタモリさんに批判的だった。
障害がある人の社会参加や共生が取り上げられるとき、社会の側が変わることの必要性が指摘される。そのことは至極当然ではある。だが、今よりずっと人々が保守的だった時代に登場し、今では、その特徴が個性として受け入れられている人たちがいる。彼らは、その個性を社会に認められたというよりは、自身の魅力によって認めさせた人たちだ。
そんなことを思いながら、サスケさんや上川さんにも、人々を引き付ける魅力があったに違いないと思ったりした。
たとえどんなに社会が変わろうと、魅力的であることが他者の関心を引き付ける重要な条件であることは今後も変わらない。それは、障害の有無にかかわらず、すべての人に共通している。
※原稿中の年齢は2003年5月11日時点。
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